【寄稿:開館2年前プロローグ・イベント】「想像力は、あなたの手から——レゴとぬいぐるみで、2年後の劇場をプレビューした日」山本ジャスティン伊等

2025年11月30日、ニッショーホール(港区虎ノ門)で、みなと芸術センターは「開館2年前プロローグ・イベント」を開催しました。当日は、「プロローグ・トークセッション」「コラボレーション・パフォーマンス」をメインプログラムに、「VRエンターテインメント」「演劇ワークショップ」「レゴ®ブロック・ワークショップ」「ウォーク」「ネットワーキング・テーブル」「~砂浜でひとやすみ~出張!みなとコモンズ」など、様々なプログラムを終日かけて開催しました。
このページでは、当日プロローグ・イベントに参加した作家やライターが、それぞれの目線でプログラムを振り返り、執筆した文章をお届けします。今回は、レゴ®ブロック・ワークショップと演劇ワークショップに参加した山本ジャスティン伊等さんの寄稿です。同じプログラムに参加しても、感じ方や響き方は人それぞれ。当日参加できなかった方はもちろん、当日参加した方も、是非自分と違う角度からもう1度プロローグ・イベントを振り返ってみてください。

【ライタープロフィール】山本ジャスティン伊等(やまもと・じゃすてぃん・かれら)
1995年生まれ。カリフォルニア州サンタモニカ出身。劇作家、演出家、批評家、Dr. Holiday Laboratory 主宰。
近年は、他ジャンルの引用やオマージュを用いながら、メタ的な構造を多重に構築し、劇中の役とそれを演じる身体の関係に含まれる政治性を主題として、演劇作品を発表している。
近作に『脱獄計画(仮)』(2023年、こまばアゴラ劇場)『想像の犠牲』(2024-2025年、ロームシアター京都/吉祥寺シアター)など。
また文筆活動として、リイド社のweb漫画雑誌『トーチweb』で「ひまの演出論」を2023年より連載、『ユリイカ』へのエッセイ寄稿、批評家の山﨑健太氏が主宰する批評紙『紙背』のプログラム「紙背フェロー」として掲載された舞台時評など。


想像力は、あなたの手から
——レゴとぬいぐるみで、2年後の劇場をプレビューした日

2027年11月に開館を控えた「港区立みなと芸術センターm~m(むーむ)」の開館2年前イベントとして、2025年11月30日、「開館2年前 プロローグ・イベント」が開催された。
虎ノ門・ニッショーホールで行われた本イベントは、舞台芸術の世界で活動するアーティストを中心に、全部で7つのプログラム/ワークショップが実施され、私はそのうち4つを体験した。どのプログラムも子どもから大人まで誰でも楽しめるよう配慮されており、開館への期待を膨らませるラインナップであった。
今回のレポートでは、三井淳平『レゴ®ブロックで m~m(むーむ)を作ってみよう』と、市原佐都子『m~m(むーむ)で、も~も』の2つをご紹介したい。

三井淳平『レゴ®ブロックで m~m(むーむ)を作ってみよう』

日本で初めてレゴ認定プロビルダーに選出され、様々なメディアで活動している三井淳平氏によるレゴ®ブロック・ワークショップは、子どもたちが自由にレゴを使いながら、これから誕生する劇場に想像をめぐらせる時間だった。
正直に告白すると、私はレゴが苦手だ。誤解しないでほしいが、決して嫌いなわけではない。ただあのカラフルで形も色々なブロックを前にして、作りたいものからさかのぼってどうブロックをくっ付けたら良いのか、私はいつも途方に暮れてしまう。どうしてあの小さなブロックの一つ一つから具体的なものを作れるのか、脳がついていかない。クラスにいたレゴが上手い友達が作っているのを見て感心していた記憶ばかりがある。当日、私は若干の不安を抱えながら肌寒い虎ノ門駅を降りた。

会場には小学校低学年から中学生まで、年齢もさまざまな子どもたち30名が集まり、いくつかのグループに分けられた。私はスタッフの方の案内で、小学生女子たちに混ざることになった。大人ひとりが混ざる形になったが、こちらが質問したり話しかけたりすると、短いうちにどんどん打ち解けてくれる。

©Yutaro Yamaguchi

ワークショップの前半は、三井氏による「m~m」という劇場ができるという説明の後、参加者それぞれが「新しい劇場にどんなものがあったらいいか」を考えて、付箋に書き出していく。私が卓球台とか昼寝スペースとか書いていたそばで、同じテーブルに座る小学生の付箋を見ると「客席」「照明」「音響を操作する場所」「PA」「スピーカー」「客席の椅子」などと書いている。小学生の方が現実的だし具体的だ。劇場でも昼寝したいと思ってしまう自分のなまけ精神がはずかしい。
その後は三井氏の進行で、たくさんのレゴブロックが入った袋を自由に持ってきては、自分なりの「劇場」を組み立てていく。私がいたテーブルでは、全員でひとつの「劇場」を作ることになった。はじめのうちこそ緊張した空気が漂っていたものの、レゴの創作を介すことで徐々に打ち解けていく。「これ、海藻みたい」と言って緑色のパーツを一人がブロックに差し込むと、「じゃあここに海の宝箱を作ろう」「客席は水色にしよう」と、次々とアイデアがふくらんでいく。同じグループになった小学生たちは、青や黄色の小さいブロックから使えるパーツを見つけ出し、どんどん形にしていった。私はといえば相変わらず何をどうすればいいか分からず、必要なブロックを探す係に徹していたが、子どもたちは思い思いに劇場のパーツを作り出していく。

©Yutaro Yamaguchi

ところで、私はふだん演出家として、俳優とともに演劇を作っている。それは、生身の俳優が言葉や動きを通じて、自分をギリシャ時代の人物から現代の若者といった「役」に見立てさせるフィクションだ。これをもうすこし抽象化して、人が共同であるものを別のものへと見立てることを「演劇」と呼ぶなら、レゴというプラスチックの塊が、子どもたちの手によって劇場にあるさまざまなものに見立てられていく様は、まさにその演劇的なプロセスそのものに思えた。
最後には、どんなものを作ったか、お互いに見せあう。舞台を海にした劇場、十字形のアクティング・エリアで戦うシーンを再現したもの、PAや楽屋まで作り込んでいるものなどさまざまな「劇場」が見られる。
子どもたちの想像力によって、2年後の劇場の姿により一層期待が膨らむ、充実した時間となった。